コロナウイルス治療やコロナウイルス病棟の実際

医学一般・ライフハック情報

コロナウイルスの第4波が騒がれ、現在首都圏などには3度目の緊急事態宣言は発令されている。1年前の初回の緊急事態宣言の中の街中の人の閑散さはどこへやら、現在は人通りは普段通りであり、マスクをしていれば大丈夫という過信が現在の状況を作ってしまっているように思う。

コロナウイルス感染症の治療の実際

コロナウイルスの重症度は下記のようになる。
・軽症  SpO2(酸素飽和度)≧96% 呼吸器症状なし、咳のみ息切れなし
・中等症1 93%<SpO2≦96% 息切れ、肺炎所見
・中等症2 SpO2≦93% 酸素投与が必要
・重症 ICUに入室もしくは人工呼吸器が必要
新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第4.1版

診療の手引きは基本的には医療従事者が読んで標準治療を理解するものであるが、一般の方が読んでも役に立つ情報が多く記載されているので是非一度読んでみてもらいたい。

コロナウイルス入院したらよくなる?

現状はコロナウイルスにかかったとしても上記の中等症1(肺炎があるが酸素は必要としない)までは治療薬を投与することはない。
高齢者や重症化リスクのある人は入院して、厳重にモニタリングして酸素需要が出現したら治療を開始することになる。

治療は現時点では2種類ある。
①ステロイド(デキサメサゾン)
現時点では最もエビデンスがあると言われるもので、イギリスの入院患者で行われた他施設無作為化オープンラベル試験で、28日時点での死亡率を下げることが示された。 RECOVERY試験
肺炎があり酸素需要が出現したらステロイドを10日間内服もしくは点滴することになる。軽症や中等症1の患者にもステロイドを内服させたほうがいいのでは?とも思うかもしれないが、上記論文によると軽症な患者へのステロイド投与は有害事象が多く出現することがあると示されている。

通常感染症にはステロイドは使用されない。なぜならステロイドにより人間が本来外敵から身を守る機構である免疫機構がステロイドを使用することで抑制されてしまい、感染症がさらに悪化するからである。
ではなぜコロナウイルスではステロイドが効くのだろうか、コロナウイルス感染症ではサイトカインストームといって、感染による炎症物質の放出により体内の免疫機構が過剰に作用し、肺を攻撃してしまうことで重症化する可能性が指摘されている。そのため過剰な免疫を抑制させるステロイドが効果を発揮すると考えられている。

②レムデシビル
これは死亡率を下げる効果は示されていないが、入院期間を短縮させる可能性が示された薬剤である。(Remdesivir for the Treatment of Covid-19)
まずは5日間投与して、状態が悪化・改善がない場合はもう5日間の追加投与を検討する。

この2剤を中心に診療が行われるが、コロナウイルスの重症化スピードは早くこれらの薬剤を用いても全く効果の無い患者も多い。若い人でも人工呼吸が必要になったり、ECMOなど人工肺を用いる必要になったケースを何例も経験して言える。

重症化の患者の例では、若くても肥満があったり、糖尿病を持病としてもっていると重症化しやすい印象である。

コロナウイルス病棟

コロナウイルス病棟ではどのように診療が行われているのだろうか。経験したことは脚色を交えて紹介する。

コロナウイルスに感染した患者が入院するとまずは医師も看護師も全身防備で対応する。毎回毎回患者と接する時はこれを着用しなければならない。患者により接する機会が多いのは看護師であるため、看護師の感染リスク、精神的疲労はとても高い。

患者が高齢者で、日常生活の解除が必要な場合はより大変で、トイレにいく際や洗面をする際、歯を磨く際、食事を行う時などその度に看護師は完全防備で対応にあたる。

コロナウイルス感染でそもそも入院する患者は高齢者であったり感染のリスクが高い人であるため入院が長くなることも多い。すると患者も精神的ストレスが溜まり医療者へのクレームに発展することも多々ある。

コロナウイルスが恐ろしいのは重症化するのが早いということだ。もともと軽症で入院してきた患者でも、酸素が必要になってきたと思ったやいなや、そのまま人工呼吸器をつけければいけないほど重症化することが数時間や1-2日で起こることがある。通常の肺炎では徐々に徐々に重症化していく経過であるがコロナウイルスはよりそのスピードがとてつもなく早い。

これが自宅で療養している人が、突然亡くなる理由である。ついさっきまでは肺炎もなく元気にしていたのにものの数時間で中等症をすっとばし、重症になってしまうのである。

大型連休終わり、緊急事態宣言が延長するしないの議論が、繰り返されると思うが、若い人も決して安心できる病気では無い。特に変異株ではより一層である。

1年前にみんなで力を合わせて行なった、家族にうつさないための行動を再びするときではないだろうか。少なくとも日本人全体にワクチンが接種されるまでは。

もちろん経済が打撃を受けて、社会的に失うことも多いだろう。しかし人命の方が重い。お金がなくなっても日本にはセーフティネットが整備されている。

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