呼吸器内科を専門とする医師にとって避けて通れない疾患は肺がんです。
肺がんの治療レジメンは細分化され、多岐に渡り、呼吸器内科でも
少し勉強していないと、キャッチアップができなくなってしまいます。
肺がん診療についてエポックメイキングとなるような論文を簡潔に、堅苦しくない言葉で
自身のアウトプットのためブログに書いていくことにしました。
術後補助化学療法CDDP(シスプラチン)+VNR(ビノレルビン)
記念すべき初回は肺がん術後の補助化学療法について
論文はこちら: https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.2009.24.0333
PICO
論文は
①どんな患者に対して(Patient)
②どのような介入をしたら(Intervention)
③比較対象(Comparison)に比べて
④どのような結果(Outcome)となるか
を常に意識して読みます。論文のPICOと呼ばれます。
本論文では
P:IB期またはII期の非小細胞肺癌で手術により完全切除された患者に対して
I:CDDP+VNRを4サイクル投与すると
C:術後、経過観察のみを行う群に比べて
O:5年生存率(および疾患特異的生存率)は改善する
となります。
術後補助化学療法は5年生存率を改善させる
5年生存率の絶対的な改善は、11%であった(CDDP+VNR 67% vs 観察のみ 56%)
ポイントは5年生存率を約10%改善させることです。
そのため手術後にシスプラチンベースの化学療法を行える体力のある患者では術後補助化学療法を行ったほうが良いと考えられます。
その他ポイント
・術後補助化学療法により、肺がんによる死亡のリスクが有意に減少した(HR、0.73;95%CI、0.55~0.97;P= 0.03)
・生存期間中央値は、観察群の患者では3.6年に対し、化学療法を受けた患者では6.8年であった。
・IB期の患者では化学療法による生存期間の延長は認められなかった。
・術後補助化学療法を受けた患者は、他の原因による死亡や他の原発性悪性腫瘍による死亡の有意な増加は観察されなかった。
2020年版 肺がん診療ガイドラインでは
上記の結果より
術後病理病期Ⅱ-ⅢA期,完全切除例に対して,シスプラチンの投与が可能であれば術後にシスプラチン併用化学療法を行うよう勧められる。
(肺がん診療ガイドラインより 日本肺癌学会編)
と記載されている。
間違い、ご指摘ありましたらぜひお問い合わせくだされば幸いです。
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